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2020年2月 1日 (土)

「騎士団長殺し」

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久々に村上春樹ワールドにどっぷりと浸りました。
上下全4巻の長編小説ですが、1部から3部までは、あっという間に読み進み、4部に入ってから少し止まってしまっていました。
心臓検査の病院の長~い待ち時間にその4部を読み終えることができました。

例えば、
「朝の早い時間に、まだ何も描かれていない真っ白なキャンバスをただじっと眺めるのが昔から好きだった。私はそれを個人的に「キャンバス禅」と名付けていた。まだ何も描かれていないけれど、そこにあるのは決して空白ではない。その真っ白な画面には、来たるべきものがひっそり姿を隠している。目を凝らすといくつもの可能性がそこにあり、それらがやがてひとつの有効な手がかりへと集約されていく。そのような瞬間が好きだった。存在と非存在が混ざり合っていく瞬間だ。」
だとか、
「林の静寂の中では、時間が流れ、人生が移ろいゆく音までが聴き取れそうだった。一人の人間が去って、別の一人がやってくる。ひとつの思いが去り、別の思いがやってくる。ひとつの形象が去り、別の形象がやってくる。この私自身さえ、日々の重なりの中で少しずつ崩れては再生されていく。何ひとつ同じ場所には留まらない。そして、時間は失われていく。時間は私の背後で、次から次へ死んだ砂となって崩れ、消えていく。私はその穴の前に座って、時間の死んでいく音にただ耳を澄ませていた。」
だとか、
「でも、まったく正しいこととか、まったく正しくないことなんて、果たしてこの世界に存在するものだろうか?我々の生きているこの世界では、雨は三十パーセント降ったり、七十パーセント降ったりする。たぶん真実だって同じようなものだろう。三十パーセント真実であったり、七十パーセント真実であったりする。その点カラスは楽でいい。カラスたちにとって雨は降っているか降っていないか、そのどちらかだ。パーセンテージなんてものが彼らの頭をよぎることはない。」

こういう感じの言葉の連なりがとても心地よくて好きです。
現実の中にふとポッカリと穴が開いて、
そこから非現実のおとぎの世界に迷い込む。
真実がどちらの世界にあるのか、そんなことはどうでもよくなってしまう。
真実と思っていたものが、くるりと様相を変えて、正反対の顔を見せる。

30年以上も前にその不思議な心の世界に夢中になった「ノルウェイの森」
その後の「海辺のカフカ」
中にはついていけなかった「ねじまき鳥クロニエル」なんていうのもあるけれど、
今回の「騎士団長殺し」は、なんだかスッと気持ちに落ちました。

あの全くドラマチックじゃない普通の風貌を持ったおじさんの中から、
こういう物語が紡ぎだされるのが、あ~、なんだか不思議に思えるのだけどな~。
YOSHIKIみたいな風貌の人だったらなるほどな~と腑に落ちるのにな~と思ったりする。

村上ワールドは素敵だ。
読み終わった後、いつもしばらくは手元から離せなくなる。
★★★★★

 

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