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2021年1月13日 (水)

「三たびの海峡」

Img_20210113_0001 帚木蓬生さんの作品にハマってしまいました。
「安楽病棟」「閉鎖病棟」に続いて連休の二日間で読んでしまった「三たびの海峡」
これは朝鮮人側から戦時下の日本人の恐ろしさを描いた作品です。

日本が朝鮮半島を支配していた時代。
人さらいのように強制連行した朝鮮の人たちを、炭鉱の地底に放り込み、過酷な労働を強いた日本人。
ガス突出や落盤、トロッコの暴走で多くの人が死に、
逃亡を試みて失敗した者は凄惨なリンチを受けて殺された。
17歳で父親の代わりに強制連行された主人公は、1年2か月を耐えた時、決死の脱出を図り、運よく成功した。
その後、日本人女性と恋に落ち、朝鮮開放(戦後)後、自前のお金で漁船に乗り込んで帰国するが、
故郷では日本人との結婚は到底認められず、女性は日本から迎えに来た父親に連れ戻されてしまう。

戦後を釜山で生き抜き、事業に成功した主人公は、半世紀の時を経て、三度目の海峡を渡り日本に向かう。
残り僅かな命の中で、一度目の恨みを晴らし、二度目の悲しい別れのその後に決着を付け、
人生の総決算を成し遂げる主人公。

戦時下の炭鉱がどんな場所であったのか。
今の私たちからは想像もできないような鬼畜でしかない日本人の姿。
強制連行してきた男性には過酷な労働を強い、女性には従軍慰安婦として働かせた。
日本がそのような怖ろしい国であったことを、私たちはこういう小説を読むことでしか知り得ないのだ。
日本人である帚木蓬生さんが、戦時下の炭鉱を精密に調査し、朝鮮の暮らしや文化までを精査し、これを書かれたことに感服する。

これもまた戦争によって北と南に分断されてしまったのだが、
朝鮮人は朝鮮人という一つの民族であることもよく分かった。
主人公は誇り高く強く優しい人物だ。

ドラマとしてもとても面白かった。
読み始めたら止まらなくなってしまった。

2006年に自伝『PRIDE』の出版のお手伝いをした李実根さんも、在日二世として日本に生まれた方でした。
戦時中の軍国教育の中でまっすぐに育ちつつ終戦を迎え、広島で被爆。
時代に翻弄されつつも、朝鮮民族としてのプライドを失わず、戦後の日本を生き抜いた李実根(リ・シルグン)さんの人生。
朝鮮の人はとても誇り高いイメージがある。

また、我が家の近くにある大きなため池・光明池には朝鮮の人たちがこのため池の工事に携わったという朝鮮人労働者慰霊碑もあります。
昭和3年から11年の間に行われた築造工事には朝鮮半島から来日した300人近い人が従事し、たくさんの犠牲者も出たそうです。

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