「生きる力~森田正馬の15の提言」帚木蓬生
人生に生き難さを感じている人にお勧めします。
森田正馬さんは、西のフロイト、東の森田正馬と称される精神科医だそうです。
薬など使わず、人生を「あるがまま」に受け入れて生きつくしていく「森田療法」を、帚木蓬生さんが小説家と精神科医の視点で説いている一冊。
人生に危機が訪れても、淡々と日常を積み重ねていくこと。
僧侶のような暮らしぶりの中にこそ「生きる術」があるということなのかもしれない。
「失敗を危機とみなした場合、人がとるべき第一の方法は、まず身近な日常の生活の継続です。朝起きて顔を洗い、歯を磨いて着替え、朝食の準備をして食べ、仕事に出るのです。極めて些細な家庭の仕事の内にも、人生の意味が詰まっています。」
「苦楽は共存しています。迷いも失敗も人生にはつきものです。
迷いや失敗に遭遇したら、これは綱渡りの棒だと思ったらどうでしょうか。綱渡りをする芸人は、必ず棒を手にしています。手ぶらで綱渡りをするのは至難の業です。棒は長ければ長いほど、動きは安定します。迷いも大きいほど、人生の綱渡りは確かになります。そして、また、綱渡りの人生こそが、正しく強い力を人に与えてくれるのです。」
日常の繰り返す営みの中に身を置くことが、やすらぎに繋がるというのは、最近はわかるようになってきました。
朝起きて着替えをし、洗濯機を回し、その間に朝ご飯を食べて、洗濯を干して、仕事に行く。
仕事中はとにかく気と心をフル回転させて、やるべきことをどんどんやる。
あっという間に6時間が過ぎる。
仕事帰りにジムに寄って500mを30分で泳ぎ、お風呂に入って帰って来る。
30分ほどのスイミングは、心を空っぽにしてただ泳ぐという私にとっては瞑想タイムのようなひとときです。
夕ご飯を作って食べて、夜にはこうして少しの時間、パソコンに向かったり、絵を描いたり、陶芸の続きをして、リフレッシュする。
布団に入って、少しだけ読書する。そして、眠る。
同じことを繰り返していけばいい日常は案外と居心地のいいものです。
その動作の最中にも、心は勝手にいろんなことを思い迷い考え続けるものなのですが、それはそれに任せて、取り敢えずはやるべきことをこなしていくということに救いがあるような気がします。
自身の人生の危機をも併せて解いていく帚木蓬生さんの本にはとても説得力があります。
« 「花束みたいな恋をした」 | トップページ | 窯出し~その① »
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 「世界は五反田から始まった」星野博美(2023.12.01)
- 「蝶が飛ぶ 葉っぱが飛ぶ」河井寛次郎(2023.11.21)
- 「汝、星のごとく」凪良ゆう(2023.11.30)
- 「君たちはどう生きるか」(2023.09.07)
- 「島へ免許を取りに行く」星野博美(2023.07.14)
コメント