「ジュリーの世界」増山実
大学時代の友人であり、ブログ仲間でもある「どこふく風さん」がこの本のことを書いていたので、図書館に予約して読んでみました。
大学時代から最初の就職先が京都だったので、6年間京都に暮らしていました。
風さんは、まさにその6年間、私と同じ大学のサークルで過ごし、同じ会社に就職した友です。
その時期、河原町近辺で確かによく見かけた浮浪者の人がいました。
私も覚えています。
でもその人を「河原町のジュリー」と呼んでいたのかどうかは記憶にありません。
薄汚れた着ぶくれた服で、長い髪はチリジリでコールタールで固めたようになっていました。
「あ、また会った」みたいな感じで河原町辺りに出ていくと、ちょくちょく出会ってしまう人でした。
同じ時代を京都で学生生活を送っていた作者の増山実さん。
プロフィールを見てみると、私より一つ下の方でした。
その「河原町のジュリー」の人生を描いたフィクション小説です。
ちょっと近づくのも怖いように感じていた私とは違って、
とても優しい視線でジュリーの人生をドラマにされています。
本当にこうだったのなら、ジュリーの人生には、あのように生きるべき理由があったわけで、
彼の心には見た目のうら寂しさとは違う何かがあったのかもしれません。
あの頃、見ていたあのジュリーが何歳ぐらいだったのか・・・?
このお話で行くと戦争に行ってたということですから私たちより30歳以上上?
50代半ばから60代くらいであったのかもしれません。
1984年2月5日に円山公園で凍死されたそうです。
小説の中に描かれている、当時の河原町、京極、寺町通り辺りの描写が懐かしく、
学生時代によく歩いたことを思い出しました。
祇園祭りをみんなで観に行ったのに、
祭りは全然見ないまま、すぐに薄暗い地下のパブに入って飲み始めてしまい、
出てきたらもう祭りは終わっていて、
しかも帰りのバスも最終便がとっくに出てしまっていて、
2時間ぐらいかけてみんなで鴨川沿いに歩いて帰ったこととか・・・。
河原町の夜の灯りの感じとか、
三本立ての映画館が八坂神社の前にあって、
よく観に行ったこととか・・・。
いろいろ思い出してしまいました。
どうして「河原町のジュリー」はあの頃、あんなふうに京都の街を歩き回っていたのか?
彼の心の中にどんな想いがあったのか?
それに一つの答えを出してくれているような一冊でした。
たくさんの参考文献を用いて、想像の世界を拡げられたようです。
心優しいジュリーとして描かれていることが、なんだかとてもいいな~と思えました。
増山さんの誠実な物語作りにもとても好感が持てました。
同世代、学生時代を京都で過ごされた方、読んでみられてはどうでしょう。
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